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カモS story.2

留意点

・カモフラの二次創作SSです。苦手な方は全力で回避を。

・時系列は名取が工作員たちに正体を明かした数時間後。

・メインは吊と名取。イメージはAチームです。

・恋慕や友好ではなく、執着.憎悪.決別がテーマ。ラブラブニヤニヤは今回ありません。

・台詞形式ではなく普通に地文があるのでいつもよりやや長め。ご注意を。

・閲覧の際は、読者様ご自身のイメージや理想を著しく崩す可能性がございます。そちらをご承知の上で先にお進みください。

ではでは。



ここ近年、暖冬が続いていたこともあってか、もう二月も後半に差し掛かる今冬の寒さは特に肌に刺さる。

「……さむっ」

吊は、羽織っていた上着の襟に顔をすぼめながら、恨めしそうに呟いた。

遠目からでもその色彩が伺える明るい髪色の彼女が顔を強張らせている様子は第三者から見れば、なかなかに近寄り難いものがあり、
彼女生来の眼力の強さもあってか、まるで見えない壁が存在するかのように、吊の半径一メートル以内を歩こうとする者はいなかった。

バレンタイン直後ということもあって、街はなかなかのカップル率だったが、そんな事実すら今の吊には煩わしく、彼女の張る結界の強さをより頑固たるものにしていたのかもしれない。
傍目から見ればカップルに嫉妬する寂しい独り身の女にもあるいは見えただろう。

ただ、吊本人としては、別に寒さに対して大人気なくイライラしていたつもりも、ましてや寒空の下を身を寄り添いあって歩くカップルに爆散して地上の星になれなどと思っていたつもりはこれっぽっちもなかった。

「どうも、お疲れ様です」

吊の結界など、どこ吹く風と、まるで遠慮など無しに声をかける命知らずがいた。
そう、自分のイライラの原因なんてわかり切っている。コイツだ。

吊は目の前の相手に聞こえるよう、あからさまな舌打ちをすると、これまたあからさまに、全く視線を合わせず、今にもツバを吐きそうな声でその男の名を呼んだ。

「名取」

「はい、吊さん」

仕事中にターゲットに惚れて蒸発したカスかと思いきや、実はベテラン工作員でやく三ヶ月近く自分たちを騙していたらしいことを先ほど誇らしげに自称したカス。

名取宗司こそ、自分が今現在イラついている原因に他ならないのだ。












カモS story2

【下手すぎる】












「はい、どうぞ」

「ああ、120円返して」

「やだなあ吊さん、お金出したのは僕ですよ」

「ああ、そやっけカス」

恐らく目の前の男は生来のカスでありアホなのだろう。
こんなクソ寒い中、急に話があるとほざいて自分を誘ったと思えば、指定した場所が周囲にほぼ遮蔽物一切なしの公園のベンチ。

申し訳程度に缶コーヒーをご馳走されたところで、それが名取からの奢りと思うとありがたさ半減だ。
まあ、飲み物に罪はないし、やっぱり寒いのは寒いから、受け取ってはおく。

「アタシとしては、アンタから一分話を聞くごとにチャージ料金として200円もらいたいくらいなんやけどな」

乱暴にプルトップを開け、自分でも理不尽と分かる言い分を名取にぶつける。
こうでもしないと落ち着いて話せそうになかったからだ。
むしろ、吊としてはこうして名取の話し合いに応じただけでも対した温情だと思ってほしい。
だというのに……

「吊さん、怒ってるんですか?」

「っ!!」

わかり切ったことをわかり切った薄ら笑いで切り返され、我慢できずに胸ぐらを掴んでしまった。
やはりわかり切っていましたと言わんばかりに、名取の表情に一切の変化がない事実が、また吊のイライラを加速させる。

「要件だけサッサと伝えてくれへんかな? アタシ、生まれつきカスと長時間話すと血管に異常をきたす体質やねん」

はいはい、とまるで子どもでもあやすかのように手を上げる名取。
どうしてこいつはこうやることなす事が鼻に付くのだろうか。

服を破らんほどの勢いで乱暴に手を離された名取は、先程までの数秒間が無かったかのように自らの手にあったコーヒーをあおぎ、一息ついてから口を開いた。

「いえね、本日をもって正式に水元さんの事務所……ひいては、工作員の皆さんとはお別れという形になったことですし、最後の挨拶くらいはするのが大人としての礼儀でしょう?」

ははーんなるほど、さてはこいつアホなんだな。
アホだから仕方ないか。よしよし、優しい吊お姉さんがアホのお話を聞いてあげよう。

「帰るわ」

と、思えたのは数時間前、目の前の男が、名取が心底のカスではなく、ただのカスだと認識していた時までだ。
今の自分には、残念ながらそんなヤツの言葉をこれ以上聞く耳は持てない。

「待ってください」

立ち去ろうとした左腕を掴まれた。
瞬間、全身に怖気が走る。ひどく気分が悪い。
不快 という言葉はこういう時にこそ使うのだろうと吊はどうでもいいことを思った。

「……離せっ」

なんだこの力の強さは。
工作の練習中や、風川或子を尾行していた時、自分に軽く腕を捻られていたヤツと同一のモノとは思えない。
しばらく抵抗の素ぶりを見せたが、まるで歯が立たなかったため、やがて吊は諦めたかのように言葉を漏らした。

「……なんなん、マジで」

その声はあるいはひどく弱々しく聞こえたかもしれない。
なにしろ今日は色んなことが起こりすぎて、体力的にも精神的にも限界だったのだ。
仕事場から直帰し、シャワーを浴び、温かい飲み物を飲んで気持ちよく就寝、明日にはストレス半分以下……というプランだったはずが、このカスのせいで台無しだ。
工作中といい、こいつはアタシの邪魔をするという使命を帯びてこの世に生を受けたのではないかと思ってしまう。
そんなことを考えながら、吊は先ほど自分の口から発せられた普段なら決して出さないような声色を思い出して
なんだかとんでもなく肩に力が入らなくなる感覚を憶えた。
目の前にいたのがこのカスでなかったなら、普段の姿とのギャップで男の一人くらいはオトせたかもしれないのに。
名取に聞かせたところで一銭の得にもなりはしない。
野良犬に一ヶ月分の給料をはたいて買った高級肉を与えるにも等しい不毛な行為だ。
言いようのない情けなさからくる被害妄想に吊が現実逃避しようとしたところで、ここでもやはり名取は邪魔をした。

「何って、本当にお礼を言いにきただけですよ。
先輩方には……特に吊さんには、最初から最後までお世話になりましたから」

「よくもそんな心にもないことをペラペラ喋れるもんやな。感心するわ」

存分な皮肉を込めて言い放った言葉だった。
こんな純度100%のウソに他にどのように返せというのだ。
だのに、

「おや、普段ウソで人を騙している工作員の言葉とは思えませんね」

まるで待ち構えていましたとばかりに皮肉のカウンターで切り返される。
なんだか自分が名取に良いように話術で誘導されたかのようで、非常にウザかった。

(……ああ、もう)

吊は、見た目や普段の言動から粗野で大雑把と思われることが多い。
その印象を武器として工作を行うこともあるので、吊本人はそれを否定はしないが、実際の彼女は決してそのように浅はかではない。

元雑誌編集の職をこなしていたこともあり、吊は非常に視野が広く、物事を狭窄な視野では捉えない。
吊と会話をした相手はそのほとんどが「この人は話しやすい」という印象を受けるが、実のところ、それは吊の誘導によりその相手が「気持ちよく自分から話させ【られて】いる」のだ。

大雑把な性格であることも確かではあるが、吊はそれを自認するが故に、常に自分を冷静に見れるラインを自分の中に敷き、決して手前勝手な話し方をしないように配慮しているのである(吊本人は知らないが、水元は吊のこの点を高く評価している)。
しかし、そんな吊が

「なあ、名取」

「はい?」

自分を冷静に見ることを諦めた。

「ちょっと、言わせてもらっていい?」

この確認は間違っても名取に対してなどではない。
言うなれば、自分に対して。
今から手前勝手な発言をすることを自分に確認する、最後通告である。
あくまで名取は形式上の通過点にすぎない。

「……どうぞ?」

そして名取は、アッサリとそれに了承した。

「……アタシらの工作と、アンタやあの白金のやってることは違う。確かにこの仕事は綺麗事じゃできへんし、そのために相応のウソもつかなあかん。
けどな、それはどんな歪んだ形にしても、そこに『人』がいて、その『想い』があるから……
決して褒められた事じゃないからこそ、ソレがあって始めて、信用と金の上にアタシらの仕事は成り立ってんねん」

「……僕の仕事はそうではないと?」

「アンタらは、智さんをまるで虫ケラ同然に見てる……いや、違うな。
そもそもアンタらは智さんを見てすらない。
アンタらが頭の中にある工作プランでは、智さんはい【存在して】ない。
ゴールに行こうと思ったらそこに壁があって邪魔やから砕け、程度のモンなんやろ」

「……」

「悪いけど、そんな当たり前のことも理解できんヤツと、アタシは一緒に仕事したくない……まあ、ある意味よかったわな。アンタと白金がこんな形で関わっているって知ったのが今日で。
もうほとんどアタシらがすることは無いわけやから?
後はエリートさんお二人で好きなようにすればいい訳やからなっ」

---ああ、言ってしまった。
別に、名取に対しての罪悪感なんてものがこれっぽっちでもあったわけでは無い。
ただ単純に、吊が今の自分の姿がひどく好きでないのだ。
自分の言が間違いや言いすぎなどと、今さら遠慮するつもりはないが、それにしたって、意見やその並べ立て方が子どもすぎる
相手が相手なら、揚げ足を取られて一発で論破されかねない言い方だ。
理屈だって通ってはいない。
あえて自分で自分にダメを出すなら、吊とて白金や名取の本当の想いを理解している訳ではないのだから、真っ向から吊はこの二人を否定は出来ないのだ。
だが、そもそもそんなことはどうでもよかった。
目の前にいるこの二枚舌と、あのいけ好かない白い男の考えを理解したいかという前提からして吊の中では否なのだから、一も二もない。
吊としてはこの台詞を置き土産としてこの場を去るつもりだったので、訂正や、まして謝罪など必要ない。

「……そんだけ。じゃあ、もう会うこともないやろけど」

言いたい事を言い終え、いつの間にか話されていた名取の手を確認すると
吊はなんの躊躇いもない歩みで、元後輩に背を向けた。

「……はぁ」

ひどく……ひどく疲れた。
家に帰ったらシャワーなど浴びずにそのまま倒れこもう。
吊はそう心に決め

「優しいですね、吊さんは」

その場で、倒れこみそうになった。

「……ハァ?」

目も合わせなかった。これ以上こいつの顔を見る必要もないと感じた。

「僕が新人として、あなたの下についた時からそうでした……僕はさぞ出来の悪い後輩だったことでしょう。そのように振る舞っていましたからね。
でも吊さん、あなたは決して僕を見放さなかった」

名取の言葉で再びハラワタが煮え繰り返ったような大人気ない顔も絶対に見せたくはなかった。

「……自意識過剰。社長に言われたからや」

「違いますよ、そういう意味じゃありません。
僕だってこの仕事は長いですから、目の前の人間が内心で自分をどう思っているかなんてのはだいたい分かります。
……特に吊さん、アナタは分かりやすいですから」

絶対に見せたくなかったし、見たくもなかった。

「アナタは僕をどうしようもない後輩だと、手に負えない問題児だと感じながらも、決して僕を心から見放すことはしなかった。
なんだかんだと口煩く道を示し、僕を導いてくれました。
大変に良い指導だったと思いますよ。
惜しむらくは、僕が実際のところそんなモノを必要としない人間だったという事実ですね」

くそ。笑い声くらい隠せカス。
こっちがどれだけ言いたいことと見せたいものを抑えてるのか分からないのか
あるいは、分かった上でやってるのか……

「もう一度言いましょう。僕は後輩としてお礼を言いにきたんですよ、吊さん。
短い間ではありましたが、本当にお世話になりました。
どうしようもない僕の先輩が、アナタでよかった」

---だから、言葉だけ殊勝でも仕方がないだろカス。

見なくても分かる。自分の先ほどの言葉は、名取にとってなんの意味も為さなかった。
名取は反省もしていなければ感傷にも浸っていない。
別れの涙など以ての外。目の前の女を嘲笑していることを誤魔化そうともしない声色で

「そしてこれは仕事上の先輩としてのアドバイスです。
---吊さん、アナタ、この仕事向いてませんよ」

圧倒的で、決定的な引導を渡した。

「……」

「……」

沈黙。

「……名取」

「はい」

その静寂を破り、切り出した吊のその声色は意外にも、今日いちばんに自然なもので、それに対する名取の返答もまた、まるで先輩の問いかけに答える後輩のように無理のないものだった。

「ダメやな。アンタ、一個だけ決定的に間違ってるで」

「……なにがダメなんですか」

「アタシがダメなアンタを見放さへんかったってアレな、大ハズレ。
アタシ、最初から最後までアンタのこと嫌いで仕方なかったから」

「そうですか、残念です。僕は吊さんのこと、ずっと慕っていましたよ」

その言葉を受けて歩き出した吊は、やはり二度と振り返ることはなかった。






名取は寒風のおかげで雲が流され、都市部にも関わらず星がよく見える夜空を仰いだ。
その表情を伺うものはいない。

「だから向いていないんですよ。吊さん。工作員のくせに---」






吊は街灯の明るさが鬱陶しさすら感じる帰路を、まるでそれらを振り払うかのように足元を見つめながら早足に歩いた。
その表情を伺うものはいない。

「ホンマにベテランかあのカスっ……偉そうにするクセに---」






まったく





ウソが、下手すぎる。












fin.
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