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オゾS story.2 【私立 怖気苺女学園】

オッス!おらマナカ! 自分のSSのクオリティに悪い意味でゾクゾクすっぞ!!

という訳で、今回はマナカのSS更新!です!

以下、留意点!!


・改行とか句読点とかかなりいい加減ですすいません。はい、言い訳です。すいません。

・オゾケ の二次創作SSになります。
 そういうの苦手だぜって方は全力で回避を!


・閲覧の際は、読者様ご自身のイメージや理想を著しく崩す可能性がございます。
 そちらをご承知の上で先にお進みください。

・「学園パロディ」と呼ばれる、キャラクターを「もし学生だったら?」という視点で創作したものです。
  そういうのマジ無理!! って方はご注意をば!!



では、どうぞ!











私立怖気苺女学園高等部への通学路であるこの上り坂は都内でも指折りに数えられるほどの急こう配であり。
季節が秋に移りつつあるとはいえ、夏の蒸し暑さを未だに幾分か引きずっている今時分においては決して軽やかな足取りで進めるものではない。
ましてや、そもこの学校に通うこと自体を億劫に感じているイチゴにしてみれば、こんな道のりは拷問以外の何物でもなく
五秒に一回ほど訪れる「もう帰ってもいいんじゃね?」という悪魔の囁きにいつ負けてもおかしくない心持ちで、彼女はそれでも歩を進めていた。

ここ数日間、学校をサボってずっと寝ていたこともあってか体が重い。
これは学校について授業が始まったら即睡眠の流れだろうか。確か今日は体育が無かったから一日中座っていられるはずだ
よし、決定。今日は一日机とキスをし続ける日にしよう。
そんなもはや怠惰などという言葉からもかけ離れた学生らしからぬ思考にイチゴが泥酔しようとしていた時

(……あー)

ふと六時間目、すなわち一日の授業における最後の時間の欄にあった時間割名を思い出してげんなりした

【LHR】

思わずため息を漏らさずにはいられなかったイチゴであったが
実はというかそもそも学校にいく意欲など元から一ミリもないイチゴが今日この日、脚を小鹿ばりに震えさせて坂を上る動機は
その六時間目のLHRなのである。

「イチゴは……今年の文化祭には参加しないのかい?」

この学園の理事長であり、自分が唯一といっていいほど敬愛する存在である祖父に、あのくしゃっとした困ったような顔で問われては
「学校など行きたくない」と一蹴するわけには行かず、今日この日には必ず登校すると約束してしまったのである。

そう、本日の六時間目、LHRにおける五十分という時間は
秋の終わりに来たるべき、怖気苺女学園高等部の文化祭、その出し物を決める日なのである。












オゾS Story.2
【私立 怖気苺女学園】












イチゴがクラスに入るとまず何人かの「おっ」という小さな驚きの視線に晒される。
まあ授業日数やら単位やら何やらをそれなりに計算した上でのギリギリを休んでいるとはいえ、クラスの中でも欠席が目立つイチゴが
朝から教室の扉を開けるという光景はそれなりに珍しいモノであることは彼女自身も否定しない
付け加えるとするならば、彼女がこの学園の理事長の孫であることもあながち無関係ではないのだが、イチゴはそこをあえて考えないように普段からしていた。

「おはよう、イチゴちゃん」

まだ一日の始まりだというのに既に疲労がピークにきている体を勢いよく机と椅子に任せると、頭上から挨拶の声がかけられる。
イチゴが欠席を重ねて、久しぶりに学校にくると決まって必ず最初に声をかけてくるのはこの少女である。

「……おはよう、大福」
「うん、体は大丈夫? 今朝もちょっと調子悪い?」

体のエネルギーをまったく使わず、首の角度だけを動かしてそこにいる少女、大福の姿を確認する。
今日も今日とてキッチリと清潔に制服を着こなし、後頭部に結いあげた黒髪とうなじには、そういった事に疎いイチゴでも多少羨ましく感じる艶やかさを感じる。
この容姿でボーイッシュは口調、そして人当たりのよく気配りができる性格なのだから男女問わずモテるのも納得というものだろう。
ほとんど仮病による欠席だということが分かっているであろうに、それでも嫌味なく真剣に人を心配できるのは才能だなと思う。

「別に……ちょっとダルいけど……」
「そっか、何かあったら言ってね。あ、プリントとかノートとかも取ってあるから」

これ例えば私が大福のこと好きだったりしたらでっかいピコハン振り回して周りの人間ぶんなぐりまくるくらい嬉しいんだろうな。いや我ながら例えの意味分からんけど。
などと未だ眠気の抜けていない頭で意味不明なことをイチゴは考える。

そう、彼女、大福はモテる。モテるのである。
「そんな漫画みたいなことあるのか」というツッコミを覚悟で言うが、この女子しかいない怖気女学園においても尚それは例外ではない。
バレンタインやらホワイトデーやらクリスマスのイベントごとの際にはよく紙袋を両手に抱えている姿を見て、難儀なものだといつも他人ごとのようにイチゴは思う。

だいたいの女子は流石に自分達の性別を理解した上でおおっぴらにそういうことはしない訳なのだが
中にはもはやそういう部分すら吹っ切れてしまっている者もいて、対岸の火事ではあるのだが時々怖くなることがある。
それは大福の魅力自体もそうであるし、そんな行動に踏み切れてしまう女子にもだ

「……お、おはよう、イチゴ、ちゃん」

ほら怖い女子きた。
というセリフを一瞬で飲みこんで、大福の後ろから聞こえてきた声に視線を向ける。
そこには、まだ寒くもなっていないというのにマフラーとニット帽でほとんど顔を隠したタルトが立っていた。
いつもの事ながら決して自分の存在を主張しないように、しかしこれも決して大福の傍から離れないと言って憚らないようにピッタリと寄り添っている。

「あ、タルトおはよう」
「う、うん……おはよ、大福」

タルトは数いる大福好きな生徒の中でもかなり露骨にその好意を示している少女だ。
そのせいで一部生徒からの風当たりが大変よろしくなく、偶にそのあたりのよく分からない派閥とぶつかり合っているのを見かける
何が問題かというと、タルトに言い寄られている大福本人がなかなか満更でもない反応をするため、余計に状況をややこしくしているのである
まあ大福にしてみれば単に他の女子よりも多少仲のいい友達、というだけの距離感なのかもしれないのだから、大福まで含めて問題のように言うのは多少酷だろうか。

「今日も可愛いね……でも、やっぱりタルトはちゃんと顔も出した方がいいと思うよ?」
「! うるさいっ! 死ね!」
(……)

前言撤回。これは周りの人間がイライラするのも仕方ないのかもしれないとイチゴは思いなおした。
大福とタルトのこの流れが始まると少し長くなるということを記憶していたイチゴは、そういえば一時間目は数学だったかということを思い出し。
今、可及的速やかに、睡眠に入ることを決意し、速攻で意識をブラックアウトさせた。



φ



「……あれ?」

一時間目が始まる前に寝たと思って次に目を覚ましたら昼休みだった
何を言っているか分からねーと思うが私も何をされたのか分からなかった。頭がどーにかなりそうだった。

「……購買、いこ」

朝よりも幾分か軽くなった体を机から引きはがし、ゆったりとした足取りでイチゴは購買へと足を向けた。

(今日も、誰にも起こされなかったな)

まあ、よくあることなのである。
この学園の理事長の孫娘であるところのイチゴが居眠りをしているのを見ても注意してくる教師などは、ほぼほぼ皆無なのだ。
別にイチゴとしては理事長の孫であるという肩書で幅を利かせたつもりも、まして祖父に圧力の行使などを仄めかしたことは一度もないのだが
どうにもこの学園の教師一同はそこを恐れているらしく、イチゴが多少素行の悪い行いをしていたとしても咎めない。

それに引っかかりを覚えることはあっても、困ったことはないので、別にイチゴ自身もどうにかしようとは思わなかった。
楽でいい、と思う。
ただ、その空気が生徒間にまで広まって、元々近くはない彼女たちとの距離感が遠巻きになっていくのは
なんというべきか「やりにくい」と感じることはあった。

(……寂しいわけじゃない)

断じて。断じて。

「あ、あの、あの、すいませっ、あの……」

そんな風に考え事をしながら歩いているといつの間にか購買に到着していたようで。
昼休みということもあって中々にごった返している購買の空間において尚、ひときわ情けない声で意識を現実に引き戻された。

「あ、あの、えっと……すいません、通して……あっ」

余談なのだが、怖気苺女学園の生徒総数は多い。
県内でも「女の子をイイトコに行かせるならオゾ女」と言われるぐらいには有名だし、人気も高く
それに見合うだけの設備や懐の大きさもある。
なので、昼休みの食堂や購買などは毎日がそれなりの激戦区の様相を呈しており
今イチゴの目の前にいる彼女のように、どんくさいと自分の欲しいものなど何一つ手に入らない
なんというか、これは将来的な女性社会における縮図なのではないだろうかとかどうでもいいことを思いながらその「どんくさい彼女」を見ていると
ふとした拍子に目が合った。

「あっ……お、おはよう……いちご、ちゃん……」

ああそうか、自分は朝学校に来て速攻で眠りに入ってしまったから、恐らくはその後で教室に着いたであろう彼女、ちよことは顔を合わせていなかったのだ。

「……オハヨウ」

自分でもぶっきらぼうだと分かる挨拶をちよこに返す。
実を言えばイチゴはこの目の前にいるちよこと話すのがあまり得意ではない。
自分とて社交性がある方ではないと自覚しているイチゴだが、目の前にいるちよこはそんな自分から見ても明らかにコミュニケーション能力が欠如しているように見える。
話し方や視線の行き場もいつも安定せず、同じ学年内でも彼女のことをよく思っていない女子は多いそうだ。
ちよこ自身の容姿が大変に肌の白く長い黒髪の映える可愛らしい外見をしているのがまた一層それに拍車をかけるのかもしれない。
そういえば去年、修学旅行に行った際、班行動していた5人の女子の中でちよこ一人が10人近い男性に声をかけられ、しかもそれを彼女自身がハッキリ断れないため
一日にして班内の空気が最悪になったとかならなかったとかいう話を聞いた気がしないでもない。まあこれは心底どうでもいい話。

そんな風に常日頃からオロオロしています空気を放出することを抑えられないちよこは、ハッキリ言えばイチゴが苦手とするタイプなのである。
それから、もうひとつ……

「クッキー美味しかったって、おじいちゃん、よかったね」
「!? え、そ、そんな、あんな、下手くそな……」

瞬間、先ほどまで生クリームのように真っ白だったちよこの頬が朱に染まる。
それを見てイチゴも瞬間、イラッとする。

そう、何がきっかけで、そして何をもって今も尚続いているのかは分からないのだが
何やらこのちよことイチゴの祖父であるところの柏井理事長の間には、何やら普通の生徒と教師というだけに収まらない何かがあるらしい
というと、まるで祖父が生徒に手を出したかのように聞こえるので一応は訂正しておくが
どうやらちよこの方が一方的に祖父に好意を寄せているらしいのだ(それがいわゆる異性的なものなのかどうかはあえて触れないが)
それでたまに手作りのクッキーやらケーキやらを祖父に手渡ししているらしい。
本当に一体何がどうなってそんなことになっているのかイチゴは分からないし分かりたいとも思わなかったが
正直に告白するとややジジコンの気があるイチゴにとってもその光景はハッキリ言って面白いものではない。

なので、どうしても彼女と話すとき、イチゴの語気は強くなってしまうのだ

「何やってんの? そんなんじゃ一生おひるごはん食べれないよ?」
「え、ぅ……」

何がえぅ、だ。そんな凹み方あるか。あざといわ。あざとちよこか。

「はぁ……」

ため息を一つつく。
イチゴとしては断りをひとつ入れておきたいのだが、別にちよこの事を「嫌い」な訳ではないのだ。
それはまあ元々ちよこみたいな人種が苦手ということもあるし、何よりも祖父とのよく分からない関係性については考えるだけで血管ピクピクしてしまうが
それで出会いがしらにピコハンで泣くまでぶん殴った挙句、何がしかの先端を突き付けてやろうかなどという理不尽なことは思わない。
むしろベクトルが違うとはいえ、自分と同じように周囲に馴染みきれないちよこに多少同情の念を抱かないではなかった。
なので

「100円」
「え?」
「100円ちょうだい」
「えっ、あの、えっ」
「はやく!」
「は、はいい!!」

半ば恐喝にちかい形でちよこの小さな手から百円硬貨を奪いとる。
普段あまり口数の多い方ではないイチゴだが、それ故にたまに発せられるドスの効いた声には周囲を緊張させるだけの力がある。
イチゴはちよこから受け取った(奪い取った)百円玉を強くにぎりしめ、親鳥から餌を奪い合う小鳥たちもかくやという勢いで購買に群がる生徒の群れの中に強い歩調で進撃をはじめた。

これも余談なのであるが、イチゴは体育の成績が学年の中でもかなり良い方の生徒として周囲に覚えられている。
短距離を走れば風のようにトラックを駆け抜け、握力を図らせればゆうに他の女子の二倍の数値は堅い。
別段、なにがしかのスポーツ競技をたしなんできたという訳ではないのだが、それでも周囲から認められ、イチゴ自身もステータスとして主張できる数少ない技能の一つであった。

「……すごい」

ちよこは思わず感嘆の声を漏らす。
というのは、自分がついさっきまで5分以上かけても1ミリとして進行できなかった人垣の中にイチゴが凄まじい速さで潜行していく姿を見て、である。
時には針の穴を通るようにスムーズに、時には城門を突破するかのように力強くイチゴはその歩を進める。
体感が良いのか、足元をとられてもつれたりすることもほとんどなく、ちよこの苦戦が嘘のようにイチゴはあっという間に購買の最前列へとたどり着いてしまった。
それを見ていたちよこ当人はというと、もう完全に呆気にとられたように棒立ちになっている。

はたして自分とどれほど体が違うつくりをされていればあんな動きができるのだろう、などと大仰な事まで考えてしまったくらいだ。

そうやってまるで置物の人形のようになっているちよこの顔に、次の瞬間、なにやら柔らかいものが飛来した。

「わぷっ」

面喰っておかしな声を上げる。顔面に激突して、そのまま重力に従って落下しそうになるナニかを必死に両手で抱え込んだ。

「……メロンパン」
「それでよかった?」

自分がオタオタしている内にいつの間にか人垣から完全に脱出したイチゴに声をかけられ、ちよこは視線を手元のメロンパンとそれを寄越した彼女に行き来させる。
それを見たイチゴは、いつまで経っても言葉の返答がないことに痺れを切らしたのか、眉を分かりやすく歪めて若干怒気を含んだ声で再度問うた。

「なに? それじゃなかった?」
「! う、ううん! こ、これが、欲しかったの……これ、私も……黒虫たちも、大好きだから……」
「そう」

それを聞いて自分が間違っていなかったことを再確認したイチゴは、自分用の焼きそばパンとコーヒー牛乳を手に踵を返した。
後ろの方でちよこが何か言いたげだったが、別にちよこと自分は友達でもなければ一緒にお昼ご飯を食べるような間柄でもない。
用が済んだから自分の教室に戻る。それだけである。(あと、ちよこが個人的に飼育しているらしい「黒虫」という謎しかない生き物の話を聞きたくないというのもある)
まだ購買に群がる人の喧騒から逃げるようにやや速足めでその場を去ろうとすると

「あ、あのっ……!」

この女学園内においてはなんとも珍しい、「ちよこの大きな声」に後ろ髪をひかれ、思わず振り向く。
するとそこには、まるで自分の大きな声に自身がもっとも驚いたという風に慌てふためくちよこが「えっと、あの」と言葉を選ぶように視線を泳がせていた。
ここで先ほどと同じように「なに?」と急かしても良かったのだが、ここはほんの少しだけ待ってやることにした。特に理由とかはない。

「あ……」

たっぷり十秒ほど時間を使ったところで、ようやくちよこはその唇を開いて、定まらない視線でしかし、確実にイチゴの目を『見ようとして』こう言った。

「……ありがとう」
「別に……じゃ」

なんだか首の後ろあたりがむず痒くなったので、その感覚を振り切るように、そしてまた出来るだけそれをちよこに悟らせないようにイチゴは再び踵を返した。
確認であるが、別に自分とちよこは友達という訳ではない。
なんならクラス内でも言葉を交わす回数は少ない方に数えられる間柄であることだろう。
だから一緒にお昼を食べることもなければ、それが悪いことだともまったく思っていない……だが

(……まあ、たまになら助けてやらないでもない)

そんなことを思いながら、イチゴは手元の焼きそばパンとコーヒー牛乳をお手玉しながら教室に戻るのであった。

(ただしおじいちゃんに変なことしたらしばく)



φ



「我がクラスの演目は演劇! 演劇にすべきです!!」

さて、昼休みを終えて眠気がピークに達する五限目の現国をその眠気に一切逆らうことなく乗り越えたイチゴは、それでもまだ欠伸を噛み殺しながら本日最後の時間を迎えていた。
ぶっちゃけというか、ここまでの様子を見てもらえば一目瞭然であろうが、イチゴはこの『文化祭の出し物』という事案について驚くほど興味がない。

そもそも去年、仮病で文化祭という行事に関するすべての日程を欠席してほとんどノータッチであるのに、そこに対してもなんの未練もないのだ。自分でも大した興味の無さだと思う。
ただ、そんな自分と周囲の生徒たちには歴然とした温度差があるらしく、本日はじめてスタートから目を覚まして黒板を見ているイチゴは、早くもそのギャップにげんなりしていた。

「台本は絶対にシンデレラ! 必要であれば私が脚色します!」

中でもこのクラスの委員長であるところのムースの熱といったらそれはもうとんでもない。その勢いでウィンブルドンとか行ったらイイとこまで行けるんじゃないかというほどだ。
もともと女子高ということもあって、こういったイベント毎における催しものに関して生徒全体のモチベーションは高い方なのであるが
その中でも今回のムースの力の入り方はすごい。何でも、どうしてもシンデレラの芝居をやりたいと言って譲らないらしく
今日のこの時間に出し物を投票で決める予定なのであるが、その投票に備えて事前にクラスの人間たちに根回しして「シンデレラやりたい欲」を高めているらしい。
ハッキリ言って学生が行う投票というシステムにおいてギリギリのラインを犯しすぎではないかと、心配になった大福が担任に「あれはいいんですか?」と聞きにいったら

「ああ……まあ、いいんじゃないかな。それが最終的にみんなの意思だったら」

とかふわっとした返しをされたそうである。なんだこの頼りにならない担任。

「もし皆さんの異議とかないなら、脚本・演出・主演は私がやろうかなと思っているんですけどどうですか皆さん!?」
「……」

結果論だが、内心だけでも言わせて欲しいとイチゴは思う。

(先生、やっぱ止めるべきだったと思う……)

まあ、第三者の目線から見れば明らかな私物化なのであるが、クラス全体の雰囲気は不思議なことにあまり悪くはない、むしろ高揚している。
というのは、先述した通り、ムースが熱心にこの日に備えてクラスの女子全員に自分のやりたいことやそれに対しての熱意を伝えていた事が功を奏しているのだろう。
クラスの大半の生徒はいやいやムースに従わされている訳ではなく、その多くが「果たしてムースが主導で行うシンデレラはどのようなものになるのだろう」と期待を持っている様子だった。
そういう意味では、全体としてまとまりがなく、無難な出し物で無難に始まって終わる文化祭などよりは余程生産的なものが出来るであろう事を感じさせる。
その点においてはムースの手腕と熱意に拍手を送りたいところではあるのだが、ここで一つ、イチゴは個人的に主張しておきたい事があった。

(わたし……ムースにその話されてない)

なんのことはない。ムースがクラスメイトたちに協力を呼び掛けていた期間中、イチゴはガッツリと学校をサボっていたおかげで、見事に「お芝居楽しそう!」の波に乗り遅れたのである。
まあムースにその話を振られていたところで自分がそんな空気に同調できたかと言われればまったくそんな気はしないのだが
この完全に浮いてしまっている空気は普段からそれなりに一人ぼっち耐性のあるイチゴでも少々つらいものがあった。ちょっとお腹いたい。ぽんぽんぺいん。

「王子役は大福ね!」
「え、ええっ、ぼくっ!?」
「じゃ、じゃあっ、シンデレラは私が!」
「ダメよシンデレラは私だもの!」
「そこは投票でしょメガネ!」
「いいえシンデレラをどれだけやりたいかという熱意を優先すべきです!」
「大福が王子するならそれ負けないもんねっ!」
「あ、あの……私、できれば裏方が……」

ちよこ、たぶん今あんたがしゃべっても全然向こうには聞こえてないと思う、ただでさえクラス中からあーだこーだと意見が飛んでいるのに
などと考えながらイチゴはやはりこの時間でも机に顔を突っ伏した。

(あー、やっぱり、今年もサボった方がよかったかなあ……)

敬愛する祖父の寂しそうな顔に負けてつい今年は頑張ってみるなどと長持ちしない事がわかっている意気込みをしてしまったが、案の定これである。
向いていないのだ、元々。こういう風に誰かと一緒に仲良しこよしで何かをするという事が。
両親はおらず、諸々の事情で幼少期に祖父の家に引き取られ、それからは「理事長の孫」として周囲から一線を引かれる日々。
そのせいにする訳ではないが、まともに周囲の人間とコミュニケーションを取れたことも殆どなく、いつしか自分からそれをしようという意欲も一気に減退してしまった。

(別に……悲しいとか、寂しい訳じゃない)

強がりではなく慣れてしまったのだ、この環境に。
いつも自分はひとり。それでも困らないしむしろその方が周囲に余計な負担をかける事も少ない。
これからもこの先も誰かと深く関わらなければ大きく傷つくこともなくこの先の人生楽なことだらけだと考えれば、まあこういうのも悪くないではないかと思う。
今回も、音響の補佐の補佐とか、広報の補佐の補佐とか、そういう出来るだけ人と関わらずに動けるポジションへ行こう、とイチゴは思った。
そうすればまあ、一応は文化祭に参加、という面目も祖父に立てられるし、自分だって面倒事に極力巻き込まれずに今年も乗り切れるだろう。
それでいいのだ。それがいいのだ。
そんなことを思っていると

「ちょーっとまったー!」

喧騒、といって差し支えないほどに人の声が乱舞する教室内において、ひときわ大きな声が響き、その声の主は一瞬にして教室中の視線を独り占めにした。
ちなみにその声は丁度イチゴの席の真後ろから発せられた声であったため、その声を恐らく最大限に食らったイチゴは背中をビクリと跳ね上げた。
しんとした静寂が一瞬教室を支配するなか、イチゴがおそるおそる後ろを振り向くと、それとほぼ同じタイミングで馬鹿でかい声の主はそのまま馬鹿でかい声で言葉を続けた。

「ムースちゃん! ムースちゃんがシンデレラをやりたい気持ちは分ったけど、そこはちゃんとみんなで決めるべきだよ!」
「あ、あめちゃん……」
「ムースちゃんが誰よりもシンデレラをやりたいなら、みんなも分かってくれるはずだもん! だから、それをみーんなで決めよっ!」
「そ、そうだよね、ありがとうあめちゃん、私シンデレラの事になると冷静じゃいられなくて……」
「いいってことよ!」
「うん、ごめんねあめちゃん……ちなみに、いつ教室きたの? 午前中いなかったから欠席だと思ってた」
「寝坊して今きたよ!」
「そ、そうなんだ……」

イチゴが振り向いた先には、スカートだろうがなんのその(もしかしたら中に短パンを履いているのかもしれないが)、椅子の上に仁王立ちになり、バカ丸出しで笑う少女、あめがいた。
その姿をハッキリと捉えたイチゴの体にじっとりと嫌な汗が浮かぶ。


(ああくそ。今日ずっと居なかったからちょっと安心してたのに……)


この、あめちゃんとクラスメイトから親しみを持って呼ばれる彼女はしかし、ここ最近転校してきたばかりのニューフェイスである。
イチゴも欠席しがちなのでハッキリとした時期は覚えていないが、確かまだここへ来て一か月ほどしか経っていなかったと思う。
だというのに

「ちよこちゃん! ちよこちゃんも可愛いのに裏方なんてもったいないよ! 出るべきだよ!」
「ええっ!? む、無理だよ私そんな……できても木とかだよ……」
「馬ぐらいまでなら行けるよぉ!」
「そ、そうかな? 私……馬、できるかな?」

なんで嬉しそうにしてるのかまるで理解できないが大丈夫なのだろうかちよこは。

「あ、あめちゃん、たとえば僕がシンデレラやりたいっていうのは、アリかな?」
「いいんじゃないかな! でも、その場合シンデレラを男の子にして王子様をお姫様にしないとね!」
「どうあっても僕おとこ!?」
「じゃあ私がお姫様!」
「じゃあその場合タルトちゃんはきちんと言葉づかいの教養を受けなかったお姫様だね!」
「やったぁ!」

いやだからなんでタルト喜んでるの? 侮辱されてるよ?

「みーんなが、楽しくできるお芝居をしようよ!」

これが、転校して一か月の生徒の馴染み方であろうか。
もう完全にクラスの一員、否、下手をすればクラスの中心としての空気を形成してしまっている。
親しくなってからここまでのやり取りができるまでには多少の時間を要するだろうから、彼女がクラスに馴染んだの自体はもっと早かった筈だ。
コミュニケーションスキルをポケモンで言えばマサラタウンの段階から捨てた自分にしてみれば、目の前のあめという少女は『おばけ』もいいところである。
自分とは圧倒的に違う存在であるという事実が、どうしようもなくイチゴにとってあめを受け入れなくさせる。わかりやすく言えば苦手、だ。
学内で遠目からでも彼女を見つけるとイチゴは避けるように動き、出来るだけ関わりを持たないようにしていた……少なくともイチゴの方はそうしていた。だのに

「ね、イチゴちゃんも!」

当のあめの方はイチゴが何度避けても、なんなら「私あなたのこと苦手」と割とストレートに伝えても「でも私は好きだよ!?」と構わず関わってくる。
イチゴとしては彼女に好かれるようなことを言ったつもりはひとつもなく、ただ困惑が重なるばかりであるのだが……。

「私はいいよ……それこそ裏方で……」
「えーっ!? もったいないよぉ! あめと一緒に出ようよぉ!」
「……え?」

イチゴは、このあめという少女が理解できなくて困る。
誰とでも仲良くなれるそのあり方もそうだし、自分なんかを好きだと言って話しかけてくる神経もそうだし、そして何より

「あめ、どうしてもイチゴちゃんと一緒にやりたい役があるんだよ! 一緒にやろーよぉ!」

この少女に、あめに、こんな風に言われると、なんだか心の内側がくすぐったいような、そんな感覚に襲われる自分が
そんな自分の心が制御できない時があって、困ってしまう。

「私……演技なんかできないよ」
「関係ないよ! イチゴちゃんがやるからこそ意味があるんだよ!」

なんだろうこのムズムズする感じ。
イライラとは違うし、ムシャクシャとも違う。こう、ムズムズとするのだ。
上手くは説明できないのだが。

「せっかくの文化祭だよ!? あめ、イチゴちゃんにも楽しんでほしいもん!」
「あ……」

イチゴがあめを苦手な理由がもうひとつある。
あめは、何故だか分からないのだけれど、いつも自分が心にひっかけている割と重たい錠前に合うカギを、あっさりと持ってきてしまうのだ。
それが、なんだか駄々をこねている子供の自分が、優しいお母さんにすべてを見透かされているような感覚に似ていて
非常に、非常に、むずがゆく、恥ずかしくなってしまうのだ。

「……別に、そこまで言うなら、やってもいいけど」

ほら、そうなってしまうと、こんな風に顔を逸らすしかできなくなってしまう。
それがまた恥ずかしさに拍車をかけて。すごくすごくイヤだなあと思う。
何よりも情けないのは―――たぶん、本当は、それを心底イヤがってはいないのだろうと分ってしまう、自分の心なのだけれど。

「やったー! じゃあムースちゃん、立候補! あめとイチゴちゃんで、意地悪な姉と継母役ね!」
「…………ぇ?」
「シンデレラをやるってムースちゃんが言ってた時から思ってたんだ! 意地悪な姉役はイチゴちゃんにしかできないって!」
「……」

―――ああ、イヤだなあ、本当にイヤだ。
さっきはあんなにも、むずがゆくても、どこか暖かい気持ちになっていたのに。
こんなにも簡単に人の心は暗黒面に落ちてしまうものなのかと。こんなにも人は人を憎むことが出来るのだろうかと。

「完璧だよぉ! イチゴちゃんの意地悪な姉!」
「……っああああ!!」

思わず、否、思って手が出た。
机の右側にかけていた手提げ鞄(中には何も入っていない)であめを狙うが、あめは軽やかな足取りでそれを避ける。

「いいよイチゴちゃん! その調子! そうやってシンデレラをいじめるように!」
「うっさい! うっさい! うっさあああああい!!」
「いちごちゃんすごーい! よし、あめも頑張らなくちゃ! 牡丹じゃなくて豚よッ!!」
「すごい! 二人ともイメージ完璧!」
「いや、大分偏ってるだろ! あと、大福の相手役は絶対私だから!」
「……僕、女の子役やらせてもらえないの?」
「馬……馬……」
「イチゴちゃんすごいよー! もう意地悪な姉にしか見えないっ!!」
「うがあああああああああああああ!!」
「せ、先生! またあめちゃんとイチゴちゃんが!」
「……それ、僕が止めないとダメかい?」



もういい大人になろうとしている成長期の女性が、まるで小学校の昼休みのように教室の中を走り回る。
その光景はお世辞にもまとまりがある、とは言えないものだったが

それでも、これから先、このクラスが行う文化祭の出し物が、きっと楽しいものになるのだろうという予感を感じさせるには十分であった。












「ん……」

目が覚めた。自室。見知った天井。
徐々に先ほどまで自分が見ていたものを、俗にいうところの『夢』であると自覚したイチゴは
決して寝苦しさからではない汗を全身から噴き出した。

「……ナニ、今の」

はっきりとした事は何一つ覚えていないが、限りなく悪夢に近い何かを見ていたことだけは覚えている。
なんか恥ずかしい。なんか、なんかがとてつもなく恥ずかしい。
イチゴは、起きたばかりで煩雑とした髪をさらにぐちゃぐちゃと両手でかき混ぜながら身もだえした。

「あのー……イチゴちゃん?」
「!?」

扉の外から突如かけられた声に、反射的に現実に引き戻されたイチゴはビーチフラッグの世界選手権もかくやというスピードで顔を隠すように布団に潜り込んだ。

「な、なにっ!?」
「え、えと」

自分の目覚めが遅いことを気にして、声をかけにきたのであろう大福がためらいがちに言葉を続ける。

「ごはん、いつものところに残して置いてあるから、またお腹空いたら食べてって、タルトが」
「わかった! わかったからどっか行って!」

大福にしてみればこんな理不尽な返答もないだろうが、しかしイチゴも大福も大体いつもこんな感じなのであえてお互いから何かいう事はない。
そう、いつも通りのやり取りだ。気配りのできる大福がイチゴに声をかけ、それに対して不機嫌なイチゴが返す。いつも通りの。
ただ、今日は一つだけいつも通りではないことがあったらしい。

「……イチゴちゃん?」
「な、なに」
「何か、いいことでもあった?」
「は、は?」
「なんだか……嬉しそうな声、してるから」
「っ!!!」

顔が、一瞬にして赤くなった。

「うっさい! なんもない! どっか行け!」
「そ、そっか、ごめんね……」

扉越しにでもトボトボといった様子が伝わってくる足取りで、大福はイチゴの部屋から離れていった。
いつもなら、少し言い過ぎたことに対して多少の罪悪感を感じる程度の心のゆとりがイチゴにはあるのだが
今日に関しては、その限りではなかった。

(……しばらく、外出られない)

こんな顔を、ドォルズたちに……まかり間違っても、あめに見られる訳にはいかなかった。






fin.
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